FC2ブログ

記事一覧

印税生活という、甘~い響きをもつ言葉を、考察してみる

本を出したというと、「どうせ印税目当てだろう」と思われたり、「印税生活なんて、いいね」とやっかまれたりするそうだ。
~そうだ、と書いたのは、そういうことを僕自身は言われたことがないから。
僕の周りの人は、その意味では品がいいのかもしれない。
でもまあ、面と向かっては言わないだけかも・・・。

このブログ読者の中にも、そのような否定的な感情をもっている人がいるかもしれない。
そこで今日は、印税について正直に話してみる。

僕の印税は、前にも書いたが、5%だ。
最初は安い! と驚いた。
そこで、原稿の売り込みを通じて知り合った出版業界の人に聞いてみた。
返事は、
「好条件とは言わないが、そんなところだ」
というものだった。

出版不況は実に深刻で、出版社は無名の新人の本を出すことに、とても慎重だ。
著者自身に販売能力があるのなら、いい。
セミナーを定期的に開催している、あるいは、ビジネスに本を利用するから、名刺代わりに配る予定だ、といった理由により、数千部の販売が見込まれるようなら、出版社にリスクはない。

僕自身はそのような環境にはいない。
それどころか、友達の数だって、かなり少ない方だと思う。
年賀状は、20枚程度しか出さない。
「著者自身の販売能力」は、限りなくゼロということになる。

1冊の本を出す場合、通常出版社の負担は150万円くらいになるのだという。
僕の本の場合、印税を5%にしても、出版社の損益分岐点は3000部実売だのこと。
つまり、3000部売れなければ、出版社は赤字ということになる。
だから、本を出してもらえるだけで、これは大変なことで、印税の多寡を交渉できる立場ではないと考えるべきなのだそうだ。

確かに以前は、印税は8~10%が慣例だった。
しかし、最近は出版不況の影響で、印税が5%というケースは増えているのだという。
納得した僕は、出版社に条件を受諾する旨、連絡した。
この件は昨年12月にブログに書いている。
感謝こそすれ、恨みがましく思う気持ちは、その頃も今も、一切ない。

定価が1600円だから、1冊売れると、僕に80円の印税が入ることになる。
1000冊売れると、8万円だ。
ちなみにこの8万円分は、すでに受け取っている。
まだ実際に1000冊売れたわけではないが、その分の印税は、著者への「保証分」として、発行と同時に支払われるというシステムだ。
僕はこの8万円をすべて使って、出版社から直接、自分の本を買い取った。
お世話になった方々や親しい友人、さらに一部のマスコミに献本するのに、そのくらいは必要だろうと考えたからだ。

というわけで、現時点では、僕は自著から何ら実質的な収入を得ていない。
1000冊分まで、すでに前払いで受け取っているので、今後もしばらくは印税は生じない。
実売1001冊目から、1冊ごとに、80円が懐に入る予定だ。

1万部売れればたいしたものだろう。
でも、決して不可能な数字ではないはずだ、と内心では期待している。
この場合、印税は80万円。
2年かけて、自分の知識、能力をフルに詰め込んだ著書からの報酬が、よくて80万円ということになる。
時給換算にすれば、最低賃金法で定められた基準を下回るのは必至だ。

10万部売れるなんてことがあるだろうか?
まずないだろうが、もしそうなれば、大ヒットだ。
その場合、僕の印税は800万円ということになる。
ヤッホー! だ。
ただ、そのペースでずっと売れ続けるということは、考えにくい。
本は1日、日本で何冊発行されているか、知っているだろうか。
約200冊だ。
だからほとんどの本は一般書店には置かれないし、たとえ置かれても回転が早い。
流行りすたりの速度は、時代とともに早くなってきていることは、皆さんも実感があると思う。
一斉を風靡した、小説「火花」だって、今年は何冊売れるだろう?
たいした部数にはならないはずだ(文庫化されれば別だけど)。
ロングセラーという言葉は、こと書籍に関しては、ほぼ死語になりつつあることがわかる。
そういえば、水嶋ヒロの「KAGEROU」なんて、まだ書店に置かれているのかな?

話を戻す。
10万部売れたとしても、印税は800万円。
それが1年後にはほとんど売れなくなるとすると、印税で年800万円を稼ぎ出すには、10万部の大ヒット作を、毎年上梓しなければならない。
あるいは、5万部のものを、年2冊。
1万部のものを、年10冊。
もはや、まともなものなど、書けるわけがない。

もちろん、どこにでも例外はある。
出す本出す本、数十万部売れる、怪物作家もいる。
でも、あなたはそんな作家を、何人挙げることができるだろうか?

出版業界および文筆家の大体の実情が、ご理解いただけたことと思う。
そこに夢はない。
ショボイ話ばかりで申し訳ないくらいだ。

「印税目当てで本を書く」人が本当にいるのなら、その人は著しくファイナンシャル・リテラシーに劣っているといわざるをえない。
僕なら絶対そんなことはしない。
金儲けをしたいのなら、もっと簡単な方法がいくらでもある。
印税生活?
今の日本で、創作活動を辞めても、その後の印税だけで豊かに生活できるのは、音楽の分野だけだろう。
秋元康や阿久悠ならできるはずだ。
本の世界なら、ただ一人、村上春樹くらいか。
村上春樹ですら、活動を一切停止したら、10年後、20年後に、まだ多額の印税を得られているかは、大いに疑問だ。

亡くなったり、引退したりすると、たとえ大作家の本であっても、書店からは次々と姿を消す。
最後に、「文学賞受賞作」だけが、ぽつんと数冊、書棚に残されることが多い。
売って利益を上げるのが書店の商売だから、もちろんしかたがないのだろうが、それでももう少し、よき文学を書棚に残し続ける努力をしてもらえないだろうか?
偉大な作家たちの本が、書店から姿を消していく姿をみるのは、大の本好きとしては忍びない。

いまだにたった1冊の本さえも、まともに置いてもらえない僕がこんなことを嘆くなんて、はなはだ筋違いかもしれないが。

話がどんどん逸れていくので、この辺で本日の結論。

印税生活なんて、そんなもん、あるかぁ!




にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
にほんブログ村


スポンサーサイト



コメント

No title

僕なりの内山さんの現時点での印象は
平均的リタイア者と比較した感じでは

1興味探求◎
2分相応の義務を果たす◎
3もっと遊びたい○
4もっと快楽を○
5もっと静かな生活を△
6放浪志向△
7もっとお金を△

というところなので
結果として印税生活ができるかどうかは別として

出版に関しては、1と2の心理が作用したのではなかろうかと思っています。

Re: No title

ナマケモノさん、分析いただき、ありがとうございます!

自己分析だと、

1興味探求◎
2分相応の義務を果たす○
3もっと遊びたい○
4もっと快楽を△
5もっと静かな生活を○
6放浪志向△
7もっとお金を△

ですかねえ。
ナマケモノさんの考察とほぼ一緒ですし、一部の相違点に関しても、ナマケモノさんと僕のどちらの評価が真実に近いのかは、神のみぞ知る、ですね。

今の生活は僕にはいささか騒々しいですし、躁的な様相さえ帯びてきたので、そろそろ静かな日々に戻りたいのですが、出版社への責任なども考えると、なかなかそうもいかず・・・

あれ? 2分相応の義務を果たす、はやっぱり◎かな? 僕は意外とまじめかも(笑)

No title

 ダイヤモンド社から数冊出版している方は印税9%だと仰ってました。

 本を一冊書くエネルギーからしたら印税収入は安いよぉぉって仰ってました。

Re: No title

印税生活なんて言葉、いつの時代に、誰が言い出したんでしょうね、ホント。
しかし、ダイアモンド社から数冊、かあ。
1年前の僕なら何も思わなかったでしょうが、今はそれがどのくらいすごいことかわかります。
すごいなあ、いいなあ(遠い目)。

話は変わりますが(って、コメント欄で話を変えるのもどうかと思いますが)、
昨日、「大きな明日」という雑誌から取材依頼がきました。
「写真OK、実名OK、でも実際の資産額や収益はご容赦を」
と返事をしたら、それだとNGです、とのこと。
そんなこと、言えるないじゃないですかねえ、ブツブツ。

執筆には経費が必要だと思います

ジャンルにもよりますが、本来、執筆には資料代や調査など膨大な費用がかかると思います。一冊書くのに数百万円かかる場合もざらにあるのでそれを考えるとまったく割に合わないと私自身も感じています。

Re: 執筆には経費が必要だと思います

本当ですよね。
僕は作家として稼ぐつもりはないので、そういう意味では平気ですが、ある程度の報酬がなければ、いい書き手も現れません。
大の本好きとしては、その点で危惧しています。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

内山 直

Author:内山 直
医師稼業からセミリタイアし、現在は「なんちゃんて」文筆家。
有り余る時間を武器に、興味のあることに次々と取り組みながら、妻、子供3人とまったり暮らしています。
2017年に「幸せの確率~あなたにもできる!アーリーリタイアのすすめ」、2018年に「4週間で幸せになる方法」をセルバ出版から上梓しました。
どんなにお金があっても、地位が高くても、はたまた美貌の持ち主であっても、幸福度に大差はありません。
このブログでは科学的見地から「幸福学」の啓蒙に努めています。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリーエリア

フリーエリア