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去年に引き続き、今年もボストンからの留学生相手の授業に、通訳として参加してみた。

僕の友人にI画伯という人がいる。
デザイナーであり、ワインバーの店主でもあるという、なかなか自由なお方だ。
このI画伯にはさらにもうひとつの顔があって、地元のデザイン専門学校で講師をしている。

この専門学校では毎年、アメリカはボストンにあるアート系のカレッジから20名程度の短期留学生を受け入れていて、画伯は書道の講義を担当している。
僕は去年、アーリーリタイアをしてのんびりしているところを画伯から目をつけられ、その講義の通訳を仰せつかった。

講義の通訳なんてやったことがなかったけれど、まあ、なんとかなるだろうと気楽に引き受けた。
以前の僕なら、きちんとやらなければとカチカチに緊張するか、あるいは端からそんなことは無理とお断りしていただろうが、アーリーリタイア以来、ずいぶんと肩の力が抜けた。
うまくいけばそれでよし、うまくいかなければ、僕なんかに頼む画伯が悪い、と笑えばすむ。
うまくできるかどうかを気にするよりも、海外の若きアーティストたちと触れ合えるせっかくの機会を逃す手はないと考えるようになった。
責任を感じてたじろぐよりも、失敗も含めて経験として楽しもうという余裕ができてきたようだ。

実際、去年はそこそこうまくいった。
というのも、留学生を引率してアメリカからやってきた講師陣のひとりに、日本語が堪能な女性がいて、画伯が教壇に立ってレクチャーするときは、彼女が通訳をしてくれたからだ。
僕は補佐的に生徒からの説明をうけたり、画伯が生徒ひとりひとりを回りながら指導するときに通訳をする程度ですんだ。
それなら、まあ、なんとかなる。

そして、今年。
同様のオファーをうけた僕が、去年と同じような感じだろうと高をくくって出向いたところ、頼りにしていたその女性講師の姿はなかった。
今年は一緒に来なかったのだという。
「そういうことはあらかじめ言ってよ!」
と画伯に言うと、
「俺だって知らねえもの」
との返答。
やれやれ、お互いにいい加減なものだ。

まあ、とにかくやってみるしかない。
画伯と一緒に、スタッフルームから講堂へと降りていく。
今年の生徒数は14名。
髪型といいタトゥーといい、相変わらずエッジの効いた学生ばかりがずらりと並んでいる。


僕は問題なく通訳の任を果たすことができたか?
結果から言うと、なかなかに悲惨な出来栄えだった。
しどろもどろになったり、時として真っ白になってフリーズしてしまったり。
通訳を甘く見ていたと認めざるをえない。

失敗の最大の原因は、生徒たちの前に立って大きな声で話すということのプレッシャーを想定していなかったこと。
考えてみれば、僕は人前で話すのがそもそも苦手だ(今さら!)。
話す英語の内容も、友人数人との間なら気楽なものだが、大人数の前でとなると、あまりでたらめな文章を話すのは恥ずかしい。
文法や単語の選び方にも慎重にならざるをえない。
それに、これも考えてみれば実に当たり前なのだが、自分の意見なら英語にしやすい。
ところが他人が話す内容となると、僕が日常では使わない単語や言い回しもでてくる。
これをそのまま訳すのは僕レベルでは不可能だから、一旦原文を離れて意味を咀嚼し、そこから自分流に英語にするしか方法はない。
そんなことをしていると、結果として、さっぱり言葉が出てこないのだ。

例えば、講義冒頭での画伯の挨拶。
「書道のクラスは今日1日ですが、いい作品に仕上げて、日本からのいいお土産にしてくださいね」
画伯は一旦文章を区切ると、僕を横目で見て訳せと促す。
“I hope that you are writing a good piece, and make it ・・・”
日常会話ならここで your souvenir from Japan とでも言うのだが、聴衆が多いとなると迷いが生じる。

(確かsouvenirと、日本語の「お土産」とでは少し意味が違うんだったよなあ。この文脈でsouvenir と言っていいのだろうか?)

自信がもてないので、慌てて言い換える。
“I hope that your piece will be something which always remind you of Japan.”
これなら意味としては問題なく伝わっているはず。
もう時点で僕は汗びっしょりだ。

そんな僕の動揺に気づく様子もなく、画伯は講義を続ける。
「書道は他の、たとえば剣道、柔道と同じく、『道』という文字で終わります。これは日本文化においては、単に作品として仕上げるにとどまらず、それを道として究めていくという意味合いがありまして・・・」

あのねえ、そんなのどうやって訳せっていうのよ!?
終いにゃ怒るよ、ホント・・・。

しどろもどろになりながら、なんとか90分授業ふたコマが終了。
いやあ、きつかった!

さすがに反省して、帰宅後、うまく訳せなかった文章を冷静に英訳し、保存しておいた。
来年またお呼びがかかるようなら、今度はもう少しマシな通訳ができると思う。


そんなところで必死になるくらいなら、アーリーリタイアなんかせずに、医者をやっていたほうがよかったのに、と思う人もいるかもしれない。
確かに払う労力は大きいし、対価として受け取る報酬は、医師時代のそれと比べれば、笑ってしまうくらい少ない。
でも、この知らない分野に飛び込むときの、野蛮さにも似た解放感や、自分の世界が少しずつ広がっていく感覚が、今の僕にはたまらなく楽しいのだ。
こんなチャレンジは、ストレスまみれだった現役医師時代には、考えることもなかったし、そもそも時間がとれなかった。

現状を維持する作業は、楽だし、効率がいい。
でも、どうしたって面白味には欠けてしまう。
報酬の多寡にとらわれず、興味があること、縁があると感じることに、次々と挑戦していく毎日。
客観的評価はどうでもいい。
こういうことがしたくて、僕は医師の職を辞したわけだし、今はそれを必死で楽しんでいるというわけだ。





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プロフィール

内山 直

Author:内山 直
医師稼業からセミリタイアし、現在は「なんちゃんて」文筆家。
有り余る時間を武器に、興味のあることに次々と取り組みながら、妻、子供3人とまったり暮らしています。
2017年に「幸せの確率~あなたにもできる!アーリーリタイアのすすめ」、2018年に「4週間で幸せになる方法」をセルバ出版から上梓しました。
どんなにお金があっても、地位が高くても、はたまた美貌の持ち主であっても、幸福度に大差はありません。
このブログでは科学的見地から「幸福学」の啓蒙に努めています。

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