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A Prayer for Dan Thach 5 ~ポジティブさについて

ダンは自分を、ポジティブな思考の持ち主だと言う。
僕は疑っている。

共通な知人も、みなダンを常にポジティブとみなしているようだ。
なにごとも前向きにとらえ、日々を愉快に過ごしていると評する。
この男にそんなマネができるわけがないじゃないか、と僕はひとりごちる。

僕はダンの人間性を、そのようには捉えていない。
彼は、「ポジティブでありたいと常に努力し続けている」男だと思っている。

本人が自分でポジティブだと言うのから、別にそれはそれでよさそうなものではあるが、自分のことを一番わかっているのが当人だとも限らないので、お節介を承知で書いている。


ダンは30歳過ぎで結婚した。
Mさんという素敵な女性で、僕も何度もお会いしている。
結婚するとき、ダンにはひとつ気になっていることがあった。
それは、一生日本にいるかどうか、確信がもてないということだった。
新潟のことは好きだったが、当時まだ外国人講師として雇われていたダンには、家族を養うだけの給料を、日本で得続けることができるのか、自信がなかった。

ダンはMさんに恐る恐る聞いたそうだ。
「将来、アメリカに戻らなければならないときは、一緒に来てくれるか?」
Mさんは即答したという。
「あなたとなら、月にだってついていくわ」

聞いちゃイランナイような話だが、ダンが言うと、映画のようにぴしっと決まる。
外人は、そして、二枚目は得だな、と少しやっかむ。


娘さんは中学生で、合奏部に所属している。
以前はピアノをやっていた(今も続けているのかもしれない)。
ダンは彼女の音楽的才能をとても評価しているし、きっとそれは、ダン譲りなように思える。
息子さんは小学生で、スキー、サッカー、テニスと、なんでも来いのスポーツマンだ。
特に空手では、新潟県代表として、全国規模の大会で健闘している。
運動神経がいいのに加え、背が高く、足が長いから、空手の打ち合いは圧倒的に有利だ。
やさしい性格なのに、試合では勇ましく相手に向かう様は、見ていて本当に頼もしい。
(なぜ知っているかというと、僕の息子たちも同じ道場に通っているからだ。僕の息子たちの方は、全然勇ましくない。僕の子だから、それはしかたがないと思う)

ダンは自分が受けられなかった教育を、子供たちにフルサポートで与え続けている。
そのために、休みは日曜日だけで、毎日、10時間以上働いている。


独立して自分の英語学校をつくった。
経営は順調なようにみえる。
教室、そして併設されたカフェスペースは、彼がほぼひとりで、大工仕事をして造り上げた。
数年前からは、フレイバーコーヒーや、クッキー、それに奥さんと二人三脚で、ベーグルの製造・販売も始めた。
生徒さんたちがそれらを楽しめるだけでなく、コーヒーやクッキー目当てのお客さんにも、英語に興味をもってもらえるのではないかという発想だ。
ちなみに我が家のコーヒーは、いつも彼のカフェのものだ。じつにうまくて、手放せなくなる。
ダンの英語学校は、いつもコーヒーのいい香りがする。
ダンやスタッフ、それに生徒たちの笑顔であふれている。
立派なものだ。
僕は、彼が異国の地で作り上げたものに、ただ感服する。


ダンとその家族は、今の季節、毎週のようにスキーやボードに出かける。
夏はバーベキューを楽しむ。
ただ僕には、ダンがそれに心底のめりこんでいるようにはみえない。
一歩引いたところから、家族が楽しんでいる様子をみて、それで満足しているようなところがある。
育った境遇は全然違うが、その辺りは、僕とよく似ていると勝手に思っている。
僕らの気が合う理由は、案外そんなところにあるのかもしれない。


異国での生活は決して楽なものではないはずだ。
この前は、20歳過ぎの若い女性から、いきなり耳元で、「私、アメリカ人大嫌いだから」と言われたと悲しそうにしていた。
耳元で囁いたのが、まわりに聞かれないための工夫なのだとしたら、かなり周到だ。
若くて、無知であることは、時に避けがたい。
どの国にもその手の輩はいるし、どんな人生にだって、誤った行いはあるはずだ。
ただ、その女性が、人生のどこかの時点で、若かった頃の自分の愚かさに気づいてくれれば、と思う。
国籍や肌の色で人を差別し、蔑むという行いが、どれだけ卑劣なことか、理解する日が来ることを願う。


今日も彼はポジティブだ。
一所懸命、ポジティブにがんばっている。
そんな様子をみて、僕は自分に気合を入れ直す。
なかなか本が出せない?
それがどうした。
出せても、なかなか売れない?
書店で本を置いてもらえない?
だから、何なんだ。
甘えてるんじゃないぞ、と自身を叱咤する。


彼の異国での生活は、この後どう変わっていくのだろうか。
僕の大好きなこの外国人の人生が、幸多きことを祈る。

(次回、最終回)

Bridge's New York Coffee



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ダンの店のコーヒー。
僕のお気に入りは、フレンチ・バニラだ。
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プロフィール

内山 直

Author:内山 直
医師稼業からセミリタイアし、現在は「なんちゃんて」文筆家。
有り余る時間を武器に、興味のあることに次々と取り組みながら、妻、子供3人とまったり暮らしています。
2017年に「幸せの確率~あなたにもできる!アーリーリタイアのすすめ」、2018年に「4週間で幸せになる方法」をセルバ出版から上梓しました。
どんなにお金があっても、地位が高くても、はたまた美貌の持ち主であっても、幸福度に大差はありません。
このブログでは科学的見地から「幸福学」の啓蒙に努めています。

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