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A Prayer for Dan Thach 3 ~こんな感じで僕らは親交と信頼を深めていった

ダンと一緒に飲みに出るようになったのは、5年ほど前だったはずだ。
最初、僕は生徒として、ダンが運営する英会話学校に通っていたのだが、会話の中で、共通のイスラエル人の友人がいることがわかり、じゃあ、飲みに行こうということになった。
実な愉快な酒で、連れ立って飲みに出るのは初めてであったにも関わらず、一緒にいることがとても自然に思えた。

また飲もうということになり、次の機会では、SバーやワインバーPといった、僕の馴染みの店を紹介した。
明るいナイス・ガイだ。見た目だってイケてる。
どの店でもたちまち、人気者になった。
元来が社交的ではない僕は、大したもんだと舌を巻いた。

ある日、その日もかなり飲んだ後、店を出てふたりになると、僕は言った。
「ダンはいいね、みんなに愛されていて」
ダンは心底驚いた様子だった。首を大きく横に振る。
「まさか。人気者なのはスナオの方だよ。僕はスナオの友人だから、歓迎されているだけだ」
これはダンの勘違いだ。僕は断じて、「人気者タイプ」ではない。

だが、ダンの視点からみれば、行く先々でこれだけ歓待してもらえることは珍しいのだという。
むしろ、大きな外人が来たと、警戒されたり、場合によっては、怖がられたりすることもあるのだそうだ。
なるほど、僕が友人として紹介したから、みなの警戒レベルが低かったことは、確かにあるのだろう。
それにもとより、SバーやワインバーPの客筋がいいことも、大きな原因であるに違いない。
新しい日本人の友人が増えたことに対し、ダンは今でも僕に感謝してくれているが、それはお門違いだ。
ダンという素敵な友達をもつことにより、どこへ行っても、僕の株が上がることになった。
こちらこそ感謝しなければならない。

店を出てから、そのまま、繁華街のはずれを並んで歩いていた。
お互いの見解があまりに違っていたからだろうか。
それとも単に、酔っていたからだろうか。
そこに、短い沈黙があった。
ダンが沈黙の意味をどうとったのか「アイム・ソオリイ」といって黙りこむ。

僕は当時43~4歳だったはずだ。
医師として忙しく働いていた。
3人の男児に恵まれ、傍からみれば、充実な日々を送っているように見えたことだろう。
だが内面では、この頃の僕は、完膚なきまでのMidlife crisis(中年の危機)に叩きのめされていた。

残りの人生で何ができるだろうか。
身体はおとろえはじめた。
医師としての才能の限界はもう見えた。
このままやっていけるのだろうか。
息子たちを一人前に育てられるだろうか。
僕は念願の本を世に出すという事業を行えるだろうか。
そのほかもろもろの念願をどこまで果たせるだろうか。

そんなことばかり考えていた。

心許ない。はなはだ、心許ない・・・。

妻にも言えないことを、この外人に言ってみようか。
僕は辛うじて口を開く。
ひどく酔っているので、舌がうまく回らない。

「ウェオ・・・アイム・・・ステオ・イン・マイ・アアリイ・フォーティーズ」
僕はまだ40代を過ぎた。ばかりだからまだ、だからまだ、何かが・・・

「イエス」とダンが強く遮る。
驚くじゃないか。
ダンの目が輝くのだ。大粒の涙が街灯に光るのだ。
こいつ、分かるのかな、と思った時はもうイケナイ。
目の前がかすんできた。
こうなるともう、ワケガワカラナイ。

その日、その後の記憶はないし、書いていて、これは僕の見た夢なのではないか、という気もしてきた。
そのくらい、今となっては現実味のない、不思議な記憶になっている。

(つづく)



今回の記事は故・山口瞳へのオマージュとなっている。



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先日、以前ダンの英語学校に通っていたころの、クラスメートと飲んだ。
Yさんは60歳過ぎ。僕は48歳。Mくんは30代前半。
こんな年の離れた友人ができるところも、英語学校のいいところだ。
Yさんお薦めのこの店が、実によかった。

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プロフィール

内山 直

Author:内山 直
医師稼業からセミリタイアし、現在は「なんちゃんて」文筆家。
有り余る時間を武器に、興味のあることに次々と取り組みながら、妻、子供3人とまったり暮らしています。
2017年に「幸せの確率~あなたにもできる!アーリーリタイアのすすめ」、2018年に「4週間で幸せになる方法」をセルバ出版から上梓しました。
どんなにお金があっても、地位が高くても、はたまた美貌の持ち主であっても、幸福度に大差はありません。
このブログでは科学的見地から「幸福学」の啓蒙に努めています。

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